岩道 博という男 Ⅰ
1946(昭和21)年9月生まれ、
小柄だが衰えを感じさせない身のこなし
や、時にスーパースポーツに跨りヘルメ
ットシールドから見える眼光は喜寿を過
ぎたライダーだとは誰も思うまい。
後ろに付かれてミラー越しにそれが見え
ると自然とグローブの中が汗ばみ、ニー
グリップに力が入ってしまうやつだ。
ひとたびヘルメットを脱げば穏やかな笑
顔と軽快な岡山弁が飛び交う愉快なおじ
さん、地域の子供たちからも慕われるソ
フトボールチームの総監督だったりもす
る。
岡山の少年少女ソフトボールチームと云
えば、2019年AIG全英女子オープンを制
した女子プロゴルファーの渋野日向子選
手が先生と呼び競技選手として幼少期の
基礎を作った恩師として当時TVニュース
や新聞誌面を賑わした監督がその岩道 博
(博志) 氏だ。
現在も岡山のOS技研で現役でものづくり
に勤しみ、後進への技術の伝承に一役買
っているが、その実は全日本ロードレー
ス125ccのチャンピオン、日本初の国際規
格の耐久レース第一回鈴鹿8耐では
KAWASAKIワークスライダーを務め一部
開発テストを担当したZの耐久仕様で5位
入賞など素晴らしい経歴の持ち主である。
OS技研の前身であるオカザキスピードの
当時から創業者の岡﨑 正治 氏と苦楽を共
にしてきた創業メンバーの一人だが、岡﨑
氏の「何でもな、やってみんことには
わからんじゃろ」
という理論の裏打ちはあるが実際にやって
みないと判らないという現物主義、充分な
工作機械や測定機器が無い時代に岡﨑氏の
至上命令である「現場・現物・現実」
の現を文字通り体現してしてきた猛者の
一人であって、経験値と勘や工夫で理論
以上の結果を出してきた職人肌故に、数値
化された図面や100分の1ミリ台の設定
数値通りにやると物が造れないといった
特異な性質を持った技術者でもある(笑)
そんな岩道氏の半生を一人のファンとし
て、ご本人や旧知の方のインタビューを
交え連載したいと思います。
渋野日向子選手(左)と、岩道博志さん(右)(2015年3月15日)出典:朝日新聞デジタル様