クリープ現象とは?車の仕組みや事故につながる原因と3つの対策

クリープ現象とは、アクセルを踏まなくても車が前に進む現象で、ほとんどのAT車で見られます。

この記事ではクリープ現象の仕組みや、事故につながる原因と対策を解説します。クリープ現象の上手な使い方にも触れているので、ぜひ参考にしてください。

クリープ現象とは?

クリープ現象とは?

クリープ現象とは、シフトレバーをD(ドライブ)やR(リバース)に入れたとき、アクセルを踏まなくても自動的に車が前に進む現象です。

ほとんどのAT車で現れる現象ですが、一部クリープ現象が発生しないAT車もあります。ちなみにMT車では、仕組み上クリープ現象は見られません。

ここではもう少し詳しく、クリープ現象について見ていきましょう。

クリープ現象の仕組み

クリープ現象の仕組みとしては、アイドリング時でもエンジンの動力がタイヤへと伝わるAT車の特徴があげられます。

AT車はMT車と違い、エンジンと変速機を切断するクラッチがありません。代わりに、DやRに入れているときに動力を伝達し続ける、「トルクコンバータ(トルコン)」という装置がついています。

このトルコンによりエンジンがかかっている間は、動力がタイヤに伝わります。

そのため、アクセルを踏んでいなくても前に進む、「クリープ現象」が起こるのです。

クリープ現象時の速度

クリープ現象の速度は車種やメーカーによって変わりますが、平均として「5〜10km」程度と、意外にスピード感はあります。

また、エアコンのオンオフでもスピードが変化したり、エンジンの回転数が上がっている状態では平均以上の速度が出たりする場合もあります。ちょっとしたスピード変化に気付けず、思わぬ事故につながらないよう注意しましょう。

クリープ現象が事故につながる2つの原因

「アクセルを踏まなくても進む」というクリープ現象の特性は、思わぬ事故につながる場合があります。

ここでは、クリープ現象が事故につながる原因を2つ紹介します。

1.ブレーキペダルが甘くなる

ブレーキペダルが甘くなってしまうと、前の車に追突するなどの事故原因になります。
たとえば車の中で探し物をしていたり、ゴミを拾おうとしていたりと、何かに気を取られてブレーキペダルを踏んでいた足が緩んでしまうケースです。

その結果、気付かぬうちに車が前に進んでしまい、追突する事故は実際に起きています。

このようにブレーキペダルが甘くなれば、クリープ現象による事故が起きやすいため注意しましょう。

2.パニックでアクセルを踏み間違える

クリープ現象が事故につながる原因の2つ目として、パニックによるアクセルの踏み間違えがあげられます。

たとえばクリープ現象によって車が前進している状態を、「アクセルを踏んでいる」と勘違いをし、慌ててブレーキを踏んだつもりがアクセルだったケース。コンビニに突っ込む事故などもよく目にしますが、これはクリープ現象が原因の1つとなる場合もあるでしょう。

実際に交通事故分析センターの調査では、ペダルの踏み間違いによる人的要因で最も多い項目が「慌て、パニック」というデータが出ています。


(引用:交通事故分析センター|交通事故分析レポート

クリープ現象による事故を防ぐ3つの対策

クリープ現象による事故を防ぐ3つの対策

クリープ現象が原因で、思わぬ事故につながる場合があります。事故を未然に防ぐには以下の3つを心がけておくことが大切です。

  • l. 停車時などはブレーキペダルから足を離さない
  • ニュートラル+サイドブレーキ
  • 発進・停車時は運転に集中する

ここでは、1つずつ解説します。

1.停車時などはブレーキペダルから足を離さない

クリープ現象による事故を防ぐために、信号待ちや駐車時などはブレーキペダル離さないことを心がけましょう

ブレーキペダルをしっかり踏み込めば、クリープ現象は起きません。また、発進時や駐車時などは、ブレーキペダルの踏み込む深さによってクリープ現象の速度を調整できます。

これにより前の車が急に止まったり、駐車場で突然人が出てきた時にも対応できます。

うっかりペダルから足が離れてしまえば追突事故につながりかねないので、停車時や発進時はブレーキペダルから足を離さないようにしましょう。

2.ニュートラル+サイドブレーキ

渋滞などで車がなかなか前に進まない時は、ギアをN(ニュートラル)に入れてサイドブレーキ引いている状態もおすすめです。

この方法はブレーキペダルから足を離せるため、ドライバーの負担を軽減が期待できます。また、渋滞が長く集中力を持続しづらくなると、うっかりブレーキペダルから足が離れてしまったということも起こり得ます。

しかし、すぐに発進することが予測される状況ではおすすめしません。というのも、N+サイドブレーキは発進時にレバー操作が出てくるため、焦ってRギアに入れてしまうなどの可能性があるためです。

渋滞時など、状況に応じて使うようにしましょう。

3.発進・停車時はとくに集中する

クリープ現象による事故を防ぐため、発進・停車時はよりいっそう運転に集中力が必要になります。

なぜならクリープ現象による事故は、うっかりしてブレーキペダルを離したことがきっかけとなる場合が多いためです。

クリープ現象が起こる発進時や停車時は、とくに集中してアクセル操作を行いましょう。

クリープ現象はうまく使えば役に立つ

クリープ現象はうまく使えば役に立つ

クリープ現象をうまく使えば、燃費を抑えることにもつながります。

ここでは、シチュエーション別にクリープ現象の上手な使い方を紹介します。

赤信号で停車するとき

信号が赤に変わり、止まることがわかるときはクリープ現象の利用をおすすめします。そうすることで、燃費のよい運転が可能です。

当然ながら車はアクセルを踏むと燃料を消費するため、信号機の手前までアクセルを踏んでブレーキをかける走り方はもったいないと言えます。

事前に停車がわかればアクセルを踏まず、クリープ現象で進むとよいでしょう。

渋滞にはまったとき

渋滞時は進むと止まるの繰り返しになり、なおかつ進むスピードは遅いため、クリープ現象を使用しましょう。

アクセルを踏まずに済むため、燃費を抑えることができます。また、思わぬ追突事故の帽子にもなるため一石二鳥です。

駐車するとき

駐車時はクリープ現象を積極的に使いましょう。クリープ現象のスピードはある程度一定なので、安全に駐車ができます。

駐車時は前後左右と目視しなくてはいけないポイントが多く、決まったスペースに駐車しなければいけません。そのような状況でアクセルを踏むと、幅が狭くなったり、最悪の場合は追突したりする可能性が高くなります。

駐車時はブレーキペダルに足を乗せた状態で、クリープ現象で調整することをおすすめします。

発進時

車の発進時はクリープ現象を利用し、ゆったりとした発進を心がけることで燃費をよくすることが可能です。

車は発進時のエネルギー量が大きく、ブレーキで止まっていた状態からすぐさまアクセルを踏むと多くの燃料を消費します。

参考までに、省エネルギーセンターの測定結果によると、通常運転でのガソリン消費量は、発進時が34%もの割合を占めているとのデータがあります。

(引用:省エネルギーセンター|LET’S スマートドライブ

発進時にいきなりアクセルをベタ踏みするような走り方は燃費が悪く、燃料の減りも早いでしょう。

発進時の燃費をよくするコツは、クリープ現象を利用し、ブレーキからアクセルへ一呼吸置くようにアクセル操作をすることです。

クリープ現象の仕組みや使い方を理解して快適な運転を

クリープ現象はAT車特有の現象で、アクセルを踏まなくても車が一定の速度で前に進みます。

その特性が原因で、うっかりペダルを踏み間違えたり、ブレーキの踏み込みが甘く追突したりと、思わぬ事故につながることも多いのも事実です。しかし、上手に使えば燃費の改善や安全性を高めることもできます。

ぜひ、今回解説した内容を参考に、快適で安全な運転をしてください。