車メディアの仕事に携わって早27年。車に乗る時間、車に触れる機会は一般的なサラリーマンより多いんじゃないかな、と思います。ほとんどは楽しい思い出ばかりですが、ときには「うぉ、アブねぇ!」という瞬間や「イテッ、やっちまった!」という瞬間に遭遇、目撃してきました……。今回はそんな、カーライフに潜むリスクをピックアップしてみます。

日常的な動作にも危険はいっぱい!

車は重い鉄の塊、しかも可動部分が多い工業製品。取り扱いを間違えると当然、ケガをしてしまうリスクがあります。交通事故のときだけでなく、日常的な動作、ちょっとした整備のときにもリスクは潜んでいるのです。

①パワーウインドウに指を挟む

パワーウインドウ
▲窓を閉めるときは、必ず一声かけよう!

私は経験ないんですが、車のドア、窓がらみのケガって意外に多いんですよね。現代ではほとんどの車にパワーウインドウが備わっていますが、これが曲者。窓を上げ下げするためのモーターは駆動トルクが大きく、指などを挟むとケガをしてしまう危険があります。

もちろん今のパワーウインドウには手や指を切断したり、首を挟んで窒息したりする事故を防いでくれる「挟み込み防止装置」が付いていますが、これでケガのリスクがゼロになるわけではありません。JAFが行った実験によると、「挟み込み防止装置」が作動するには結構な圧力が必要で、野菜などを挟んだ場合は簡単に切断できちゃったのだとか。

子どもの細い指だったら、骨折くらいしちゃうかもしれません。自動で窓が閉まる最中に、それを止めようとして手や指を挟んでしまう事故が多いそうです。子どもを乗せるときはチャイルドシートに座らせてシートベルトを締める、ドアごとに付いているパワーウインドウのロックスイッチを使う、窓を上げるときは声をかける、などの指挟み事故防止対策をしましょう。

■参考サイト:JAF「ゴボウも大根もばっさり切れるパワーウインドーの挟みこみ(JAFユーザーテスト)」

②ドアに手を挟む

ドア
▲ゆっくり押すようにドアを閉めることが、事故を防ぐポイント

そんな事故ある? って思われるかもしれませんが、私の友人は実際、ドアを開けて天井に手をかけている場面で他者にドアを閉められてしまい、指を骨折しました。子どもや老人を乗せた後、まだ足が車外に出ていることに気付かず、ドアを閉めちゃった、という事故もあります。

外からドアを閉めるときは「ドア閉めるよ」と同乗者に必ず声かけを。バンッと勢いよく閉めるのではなく、ゆっくり押すように閉めるクセを付けるとGOODです。

③ジャッキアップ中に下敷きになる

ジャッキアップ
▲強度的に不安のある車載ジャッキも少なくない。地面が水平なところでの使用限定だ

車好きの人なら、タイヤくらい自分で交換しちゃうよ、という人が少なくないでしょう。しかしタイヤ交換などのとき、車載ジャッキが外れて落ちた車体に挟まれてしまう……という事故はとても多いんです。

車載ジャッキを使うときは取扱説明書でジャッキアップポイントを確認し、そこに掛けること。万一、ジャッキが外れても生存スペースが確保されるよう、車体の下にスペアタイヤなどを滑り込ませておくのも鉄則です。

また車載ジャッキを掛けたまま、作業するのもNG。ジャッキは車体を持ち上げるのが目的であって、そのまま保持することはできません。車体を上げたら必ずリジッドラック(通称ウマ)を掛けましょう。

特にチェーン装着のときには路面がぬかるんでいたり、雪が積もっていたりしてジャッキが外れやすいもの。ジャッキは平坦かつ硬い路面でのみ使える道具です。

リジッドラック
▲タイヤ交換などの作業をするときはリジッドラックをかけよう

④バッテリーの短絡でケガ

バッテリー
▲バッテリーにブースターケーブルをつなぐときは、プラス端子からがセオリー

自動車用バッテリーの多くは12Vもしくは24Vです(ハイブリッド車などの駆動用バッテリーを除く)。その程度の電圧だと、仮に濡れた手でバッテリーのプラス端子とマイナス端子を触ったとしても感電はしません。

注意しなければならないのは、感電でなく短絡(ショート)です! 車体には「ボディアース」と言って、バッテリーマイナス端子からの電流が流れています。バッテリーのプラス端子を外そうとスパナなどの金属工具をかけたとき、誤ってボディの金属部分に触れてしまうとショートして激しく火花が散ります。

バッテリーショートの衝撃は凄まじく、工具が手から弾き飛ばされてしまうほど。私の先輩はこの衝撃で指をケガしました。工具が一瞬で熱くなり、火傷を負うケースもあるそうです。

バッテリー端子を外すときはマイナス端子から、つなぐときはプラス端子から、が大原則。そうすればプラスマイナス端子を直接つながない限りはショートしません。

⑤ファンベルトに巻き込まれる

スパナ
▲エンジンをかけたままの作業は厳禁

エンジンルームの中を覗いているとき、もしも首にかけた手ぬぐいがファンベルトに巻き込まれてしまったら……。想像しただけでもゾッとしてしまいます。ファンベルトなど補機類を駆動するためのベルトは外から見える状態になっており、エンジンを掛けると高速で回転します。

整備中に指などを巻き込まれたら一大事。ボンネットを開けて何かしらの整備作業をする際は、エンジンを都度、オフにするのがセオリーです。たとえウォッシャー液を補充するだけにしても、必ずエンジンを切るクセを付けましょう。

⑥シートベルトのバックルで火傷

シートベルト
▲シートベルトを締めるときは、プラスチック部分を持つこと

これからの季節、シートベルトのバックルなど金属製品に直射日光が当たっていると、ものすごく高温に。車に戻ってきてシートベルトをしようとした瞬間、アチチってことになりがちです。実際にこれで火傷した人、知ってます。指ならまだしも、顔とかに触れたら……。

真夏に長時間、車を離れるときはガラスをシェードなどで覆っておきましょう。

⑦セルフスタンドで給油中に、燃料に引火

給油
▲給油口を開ける前に、必ず静電気除去パッドに触れるクセを付けよう

1998年に危険物の規制が緩和されて以降、ドライバー自ら給油するセルフ式ガソリンスタンドが増えました。セルフ式スタンドには必ず、静電気除去用のパッドがありますよね? あれ、必ず触ってください。誤って燃料をこぼしてしまった際に、静電気で引火するのを防ぐためです。

静電気なんかで本当に引火するの? と思っている方、本当にするんです! 給油中ではありませんが、私がガソリンスタンドでアルバイトしていたとき、他スタッフが誤給油してガソリンを抜いている最中に手の平からの静電気で引火した……という事件がありました(幸い、すぐ消火できて大事には至りませんでした)。

キャンプなどでホワイトガスを扱う人も気を付けてください。

今回は車に乗っていれば誰でも出くわす可能性のあるリスクをピックアップしました。車は楽しい乗り物ですが、ときに凶器にもなることを忘れずに!