トランポ誕生秘話をオグショーに直撃!

前回の記事では、トランポって何? から始まり、トランポの魅力やベース車の選び方、購入方法などを国内随一のトランポメーカーであるオグショーの服部さんに教えてもらいました。今回はオグショーが歩んできた歴史や製品作りへのこだわりに迫ります!

「トランポ」は必要から生まれたカスタマイズだった

GEARHUB編集部(以下・編):そもそも、オグショーがトランポ作りを始めたのは、何がきっかけだったんですか?

服部さん:当社創業者で今も社長を務めている小栗伸幸は、高校生時代からモトクロス競技を始め、若い頃から活躍していた選手でした。モトクロス・コースのほとんどは山奥にあり、近くにホテルなどないのが普通ですし、そもそもプライベーターには金銭的余裕もありません。そのため、前泊するときもバイクを積んでいる車の片隅に丸くなって寝るのが当たり前、小栗自身も昔はその一人だったと聞いています。当時はまだトランポ、というジャンルがありませんでしたからね。

服部さん
▲オグショー営業部の服部賜郎(はっとり・しろう)さん自身もオフロードバイク乗り!

しかし、競技で良い成績を残すためには、体を伸ばしてしっかり休むことが大切、と考えるようになり、バイクやヘルメットなどのギアを積めて、人も寝られる車を作ろう! と思い至りました。小栗自作のベッドはレーサーたちの間で評判になり、キャンピングカーショップの一室から製作を開始。その後、より本格的に製品を供給するため、1992年にトランポ専門店としてオグショーを創業した……というのが、当社の成り立ちです。

▲トランポ
▲ギアを積めて、人も快適なのがオグショー製品のスゴイところ

編:同じ悩みを抱えていた人がたくさんいた、トランポはその悩みを解決するための手段だった、ってことですか、ふむふむ。バイクだけでなく、ウインドサーフィンなどの分野でもトランポは人気ですよね?

服部さん:アウトドアフィールドまで移動して楽しむ趣味なら何でも、という感じです。特にウインドサーフィンは広い積載スペースが必要ですから、トランポが活躍するシーンはとっても多いでしょう。そのほか、マリンスポーツや釣りのためにトランポを活用する人もたくさんいますよ。

ロッドホルダー
▲天井のロッドホルダーなども、ユーザーのニーズごとにカスタマイズできる

環境がトランポ文化を育んだ

編:そういえばオグショーのある静岡県浜松市って、アウトドア遊びの宝庫じゃないですか?

服部さん:そうなんですよ。バイクで遊べるオフロードコースや林道が豊富にあり、マリンスポーツの聖地である浜名湖や海もある。天竜川では釣りやカヌーが楽しめる、と遊ぶ場所には不自由しません。この恵まれた環境がオグショーを育ててくれた、とも言えますね。

編:スタッフにも趣味人が多いんですか?

服部さん:当社のスタッフは誰もが何かしらの趣味をもって遊んでいます(笑)。実際、自分でトランポを使っている人でないと、どこに固定用のフックを付けたら良いか、ベッドの厚さをどれくらいにすべきか、といったことが分からないんですよ。

もちろん、製作する際にはお客様の要望を丁寧にヒアリングし、プロの意見も採り入れた上で製品化しますが、それ以前にスタッフ自身がトランポの活用シーンをイメージできていることが大切です。

編:オグショーの製品が理に適っている、使い勝手が抜群に良い、と評される理由はそこにあるんですね。

オグショーが家族構成を聞く理由

編:オグショーに行くと、どんなトランポを作りたいか、といった話だけでなく、趣味でのエピソードや家族構成までがっちりヒアリングされる……と聞きました。なぜですか?

服部さん:同じジャンルの趣味でも、使うギアの種類や出かけるフィールドは人それぞれです。たとえば釣りにしても、渓流釣りか海釣りか、何を狙うのかによってロッドやリール、ルアーの種類や数などは全く違ってきますよね。トランポを製作する際にはそうした細かい部分までリサーチしないと、的を射た製品になりません。なので、お客様が趣味をどんな風に楽しんでいるのか、雑談を交えながらできるだけ丁寧に伺うようにしています。

ペット仕様
▲こちらは愛犬と一緒に移動するために製作された、オーダーメイドのトランポ

また、車を趣味のためだけに使える人は、そう多くありません。普段は買い物や家族の送迎、仕事などに使い、週末はトランポとして出動、という使い方がごく一般的です。すると、たとえばベッドを畳んだときに固定金具が邪魔にならないか、楽に格納できるか、といったことも課題になってきます。ギアをしっかり積めること、きちんと休めることはトランポの大前提ですが、車としての機能を損なわないことも同じくらい重要です。

オグショーはトランポ以外、作らない!

編:ところでオグショーは膨大な数のオリジナル製品をラインナップしていますが、トランポと関係ない製品……たとえば外装パーツなどは作らないんですか?

服部さん:そこは当社が特にこだわりを持っているところです。トランポを遊びの楽しさを最大化してくれる道具と捉えており、デザイン、ファッション性よりも機能性を追求することに終始しているからです。

ベッドキットやフロアパネルといったトランポ製品の他に、ショックアブソーバーなどのサスペンションパーツもオリジナルで発売していますが、それも遊びのギアを確実に運び、快適に移動するための目的です。ハイエースやキャラバンなどの商用車は最大積載量を重視しているために、ノーマルの乗り味はどうしても硬めなんですね。キャブオーバー車特有の突き上げ感を軽減し、人にもギアにも優しい乗り心地にするためのパーツというわけです。

キャラバン
▲外観も内装もスタイリッシュなオグショーのデモカーだが、機能美によるところが大きい

このように市場にない製品はオリジナルで作りますが、それ以外のものは他社の製品を取り扱っています。餅は餅屋という言葉があるように、サスペンション、駆動系、外装などを専門に開発している会社が既にあり、それぞれ得意分野がありますからね。幸いなことに、分野ごとに信頼できるパーツを作っている会社とお付き合いがあります。

もちろん、OS技研もそのひとつです!

編:最後にPRまで……。今回は前編、後編にわたるインタビューに応じていただき、ありがとうございました。

トランポの誕生ストーリーからオグショーのこだわりまで、たっぷりお届けした今回の取材。アウトドアフィールドに恵まれた環境がオグショーを育てた、という話も印象的でした。トランポに興味のある皆さんはぜひ一度、オグショーを訪ねてみてください!

オグショー
▲二階の窓からチラ見えしているのは、オグショー代表の小栗伸幸さん等身大ボード