悪路でも愛車を傷付けない! “受け身系”オフロード走行テクニック
一般道の舗装率は約82.5%(2020年時点)と整備が進んでいる日本ですが、キャンプ場や河原、道幅の狭い林道などで未舗装の道に出くわす場面はまだまだ存在します。SUVだから大丈夫! と油断していると、出っ張った岩などでバンパーやホイールをガリッとやってしまうことも……。今回はそんな事態に陥らないためのオフロード走行テクニックを紹介します。
大事な愛車を無傷で帰還させる!
最初に言っておきますが、今回のテクニックはオフロードコースや廃道など極悪地形の走破を目指すものではありません。あくまで日常で出くわす程度のオフロードで“車をブツけない”ためのテクニックです。なので本格クロカン四駆はもちろん、クロスオーバーSUVやミニバン、ローダウンした車も対象に含みます。
まずはオフロードでヒットさせてやすい部位を知っておきましょう。デコボコ地形で傷付けてしまいやすい場所のトップは、「前後バンパー」、「ホイール」、「サイドシル」の4か所。つまり地面から近いところにあるパーツですね。
オフロードに入る下準備として、「バンパーにガムテープを貼る」「エアサス車の場合は車高を上げておく」「エアロなど、ブツけそうなパーツは予め外しておく」といった対処を行うのも一案。ちなみに私が四輪駆動車専門誌の編集者だった頃、メーカーの広報車を傷付けないためにバンパーを外してから悪路に入り、写真撮影時だけ取り付ける……といったことを行っていました。絶対に傷付けたくないのなら、対策しておいて損はないかもしれません。
なおフロントバンパーとタイヤ表面を結んだ線の角度を「アプローチアングル」(リアバンパーは「デパーチャーアングル」)、サイドシルと前後タイヤ表面を結んだ二等辺三角形の角度を「ランプブレークオーバーアングル」と呼びます。この3アングルが大きいほど、悪路を走る上では有利です。
オフロードは千差万別! 場面ごとに判断しよう
オフロードを走る上での大原則は、“谷はまたぎ、山は乗り上げる”こと。これは競技を含む全てのオフロード走行に共通するセオリーです。ただし、あくまで原則なので、どんな車種、どんな場面でも通用するわけではありません。例えば谷の幅が車のトレッドよりも広い場合には、片輪を谷底に落とした方が安全に通り抜けられる場合もあります。シチュエーションごとに判断していきましょう。
もうひとつのセオリーとして、“大きな段差を乗り越える、溝に落とすときは、バンパーでなくタイヤから”も挙げられます。これはバンパーと路面が干渉するのを防ぐテクニック。万一、段差からズリ落ちてしまったときにも、タイヤが斜めになっていればホイールが傷付くのを防げます。
それでは林道などでよく出くわす、洗濯板状にうねった路面を通り抜ける場合は、どんな走行ラインを通るのが正解でしょうか?
答えは「段差に対して常に斜めになる」走行ラインです。段差に対して真正面からアプローチしてしまうと、バンパーやサイドシルをヒットしてしまいます。最悪の場合はお腹が段差につっかえ、亀の子スタックしてしまうかもしれません。右前輪の後に左後輪、左前輪の後に右後輪という要領で、対角線上にあるタイヤが交互に段差に乗るようアプローチすれば、路面と車を干渉させずに走り抜けることができます。
嶺上になった大きな段差を乗り越える、あるいは大きな溝を通り抜ける場合も同様に“斜めアプローチ”が有効ですが、この場合は車が傾いて横転しないよう、注意が必要です。斜めにアプローチしつつ、段差や溝を車の腹下が通り抜けたら、すぐに車が真っ直ぐになるようステアリングを切って体勢を立て直しましょう。
次に、スキー競技で言うモーグルのような、コブが交互に連続した地形を走る場面を想像してみます。オフロード走行テクニック本などでは、“ふたつのコブの間を通り抜けるよう、ジグザグの走行ラインを取る”のがセオリー。これは対角線スタック(対角線上にあるタイヤが同時に路面から浮いてしまうことで発生するスタック)を防ぐためのテクニックです。しかし、この走行ラインではコブに対して直角にアプローチするため、バンパーやサイドシルを傷付けてしまうリスクが高くなります。
そこでオススメなのが、対角線のタイヤが同じにコブの頂上に乗り上げるような走行ライン。左右交互に襲ってくるコブを敢えて避けず、真っ直ぐに進むラインです。はあ? そんな走行ラインじゃ対角線スタックしちゃうじゃん! とベテラン・オフローダーの方なら言うでしょう。実はその通り。
オープンデフの車の場合、コブに対して対角線上のタイヤが同時にアプローチしてしまうと、逆側のタイヤが路面から浮き気味となって駆動力が伝わりません。なので例えバンパーなどをヒットしてしまいそうであってもジグザグに進むラインを通るしかないのですが、LSDやデフロックが装着されている車なら事情が変わります。
対角線のタイヤが浮くような走行ラインを通っても、問題なく進めます。コブを降りるとき、車体がシーソーのように傾きますが、すぐに次のコブへとタイヤが乗り上げるので不思議とヒットしません。デフの差動制限装置が付いた車ならではの走行ラインと言えます。
ただしブレーキを使った電子制御LSDの場合、駆動力がかかるまでのタイムラグがあるために勢いがつきすぎて不安定な挙動になってしまうことがあります。また、デフロックの場合はステアリングが利きにくくなる点にも注意が必要です。
その点、機械式LSDならモーグルのような障害地形も、普段走るのと同じ感覚で楽に走破できるので安心。LSDは走破性を高めてくれるだけでなく、車を傷付けずに走るためにも有効なアイテムなのです。LSDを選ぶなら、日常使いでストレスを感じにくく、しっかり利いてくれる、しかも耐久性の高いLSDをご検討くださいね。