車磨きは究めるべき“道” 。コンパウンドへの言われなき誤解を解く!

前回の記事では、洗車でのNG行為を検証するとともに、正しい洗車の方法をお届けしました。と同時に、洗車をすればするほど、車のボディは傷付いてしまう! という衝撃の事実もカミングアウト。車を傷つけたくないなら、まったく洗車しない方がベター……というのは事実なのですが、汚い車に乗り続けるのってイヤですよね。それに、汚れ自体が化学的、あるいは物理的に塗装面を犯してしまうこともあります。そこで今回は、小キズを一掃するためのコンパウンドがけと、ワックスorコーティングについて解説します。

傷付いた表面を傷付けて治す?

昔、ある歯医者の先生から「歯を一切磨かないと、歯全体が歯石でコーティングされるため、虫歯にならない」という話を聞きました(ウソがホントかは知りません)。でも、ぜんぜん歯を磨かないで人前に出るなんて、人間としてどうか、って感じ。それに歯石でコーティングされる前に虫歯になっちゃうかもしれません。洗車の話も、それと似ている気がします。

さておき。洗車用のコンパウンドを簡単に説明すると、 “研磨剤”です。研磨剤と聞くと「大切な愛車のボディを削るなんてイヤ!」「塗装が薄くなっちゃうんじゃ」と敬遠する人がいますが、注意しながら作業すれば心配いりません。というか、くすんできたボディを一気にリフレッシュし、ワックスやコーティングの効果を高めるためには必要な作業です。

コンパウンドがけする前に、まずはしっかりと洗車しましょう。コンパウンドは細かな粒子でボディ表面についたキズを削って平滑に均すのが役割。汚れが付いていると、大きな粒子でさらにキズつけてしまうからです。

ひと作業ごとに水でキレイに洗い流すことが肝心

プロは作業効率の良い電動ポリッシャーで作業しますが、アマチュアは“手がけ”がオススメ。アマチュアがポリッシャーを使うとどうしても削りすぎてしまい、複数回の作業後にクリア塗装がなくなってしまう可能性があるためです。

手がけなら、一回の作業でクリア塗装がなくなるほど削る心配はまず要りません。それより何より、汗水垂らして作業することで、車への愛着が増大する効果が期待できます!

そう、洗車とは“道”。効率よりも精神、プロセスこそが大切なのです。言い忘れていましたが、コンパウンドがけは体力と忍耐を要する作業。車が大好き、ヒマさえあれば撫で回していたい! という人以外にはあまりオススメできません。
※どうしてもポリッシャーを使いたいなら、中心軸が円運動しながら回転する「ダブルアクション」のタイプを使用しましょう。圧力が一箇所に集中しにくく、部分的に塗装膜が薄くなってしまうリスクを軽減できます。

3工程でピカピカのボディに

どんな製品を使えば良いかですが、コンパウンドの多くは「番数」が書かれています。番数が大きいほど、粒子は細かくなります。大きめのキズから均していくために、まずは3000番あたりからスタートし、7500番、9800番と3段階くらいに分けて作業していきます。最初は、数種類のコンパウンドがセットになっている製品を購入するのがオススメです。

▲ソフト99の「液体コンパウンドトライアルセット」。ちょっと量が足りないように思えますが、これだけで数回は作業できます。

コンパウンドがけは、ボディパネルを50cm四方程度ずつくらいのスペースごとに作業していきます。一度に広い範囲を仕上げようとすると、どうしても磨き残しが生じやすいからです。

スポンジに適量のコンパウンドを出したら、先ほど区切ったスペースごとに磨いていきます。ここでポイントになるのは、スポンジに込める力。3000番など粗めのコンパウンドをかけるときはある程度、力強く。9800番など細かめのコンパウンドをかけるときは、少し軽めに。と言っても撫でる程度ではキズが消えないので、スポンジが軽くつぶれる程度の力が目安です。

▲コンパウンドがけに使うスポンジは専用品を

ちなみに私に洗車を教えてくれた洗車の先生は、何kg/㎠の圧力がかかっているか、感覚で分かるのが本当のプロ、と言っていました(これも真偽は不明)。

スポンジを動かす方向は洗車のセオリーどおり、タテタテヨコヨコと直線的に。円を描くようにかけると、丸い磨きキズになって乱反射しやすくなってしまいます。また、ボディパネルの角などはあまり強い力を掛けないように注意。力が一点に集中し、塗装膜が薄くなってしまうからです。

スポンジからキュッキュッという音が聞こえるようになったら、キズが綺麗に均されたサイン。試しに水をかけてみましょう。コンパウンドをかけていない塗装面は水滴が玉のようになっているのに、コンパウンドをかけた部分は水滴が平たい形になっているのが分かると思います。これは表面の油膜が取り除かれたため。正しく作業できている証です。

▲コンパウンドをかけ、塗装面はひと皮むけた状態に

3000番あたりのコンパウンドで磨くと塗装面の表面は曇っているように見え、アセるかもしませんが心配無用です。この後、より細かい番数のコンパウンドを掛けることで曇りが取れます。

作業を終えた部分は水で徹底的に洗い流します。番数の粗いコンパウンド粒子が残っていると、次の行程で細かい番数のコンパウンドをかけても意味がないからです。当然、作業に使うスポンジやタオルも番数ごとに変えます。

ひとつのスペースで作業を終えたら、次のスペースへ。ボディ全面を掛け終えたら再度、水で綺麗に洗い流しましょう。この行程をコンパウンドの番数分だけ行います。

数年に一度の作業が車のためにも、精神的にもベター

作業時間の目安は、私の場合でいうと一回のコンパウンドがけに最低5時間×3回の計15時間。一日で行うには体力が持ちませんので、だいたい数日かけて作業します。ひと通りの作業を終えた後は、筋力アップしていること間違いナシ!

9800番あたりのコンパウンドは超鏡面とも呼ばれ、その名の通り新車に限りなく近いコンディションを取り戻せます。行程の丁寧さ(力加減?)によっては、新車以上のコンディションにできるとも。ちなみに私はまだ、その領域には達していません。

コンパウンドがけが終わったら、ボディ表面保護のためにワックスもしくはコーティング剤を塗っておきましょう。ワックスは撥水性重視、コーティング剤は保護性・耐久性重視、好みでどちらを使ってもOKです。

ワックスやコーティング剤を塗ると、コンパウンド未施工の場合と比べて、伸びの良さが全く違うことに気付くはず。コンパウンドをかけていないボディ表面には細かな汚れやキズが残っており、ワックスやコーティング剤本来の性能が発揮できていなかったのです。

ワックスやコーティング剤を施工するときは、“とにかく薄く”塗るのがポイントです。コンパウンドでしっかり表面されたボディなら、厚く塗る必要はありません。余分なワックス成分、コーティング成分は汚れとなってしまいます。

▲コンパウンドがけした後のボディは驚くほどワックスがよく伸びる

最後にコンパウンドがけする頻度についてですが、ざっと計算してみましょう。3000番のコンパウンドに含まれる粒子の大きさはおよそ3ミクロン程度。一回の作業で、最大3ミクロンほど塗装膜を削ることになります。
※それ以下の番数のコンパウンドを上から掛けても、深く削ることにはなりません

対して、ボディのクリア塗装は30ミクロン程度(車種によって異なります)と言われているので、10回も作業したらクリア塗装がなくなり、色のついた上塗り塗装面が出てきてしまうことになります。

つまり、毎年3000番のコンパウンドを掛けていたら、10年でクリア塗装がなくなっちゃう、という計算。でも、こんなに大変な作業を年に一度もできる人は少なそう。ということで、車寿命を通して数回のコンパウンド施工なら問題ないでしょう。

実際、定期的にコンパウンドがけをしていたために塗装面が傷んでしまった……という例は希です(業者による機械でのコンパウンド施工を複数回繰り返した場合は別)。むしろ洗車やコンパウンドがけを一切せず、放置していた車の方がダメージは深刻。「ボディ表面に艶がなくなってきたな」「ワックスの乗りが以前よりも悪くなってきたな」と感じたら、コンパウンドがけの好機です。ぜひお試しを。

写真/ソフト99、AdobeStock