スタック体験者から学ぶLSDの効果!悪路走破性を高めることが重要

スタック体験者から学ぶLSDの効果!悪路走破性を高めることが重要

クルマは意外なほど悪路に弱い乗り物であり、その原因の多くはデフにあります。デフの機能を強化するパーツの筆頭として挙げられるのがLSDです。

その効果は一度スタックを体験すると身にしみてわかります。

また、クルマによっては日常生活でも効果を体験できます。本記事は自動車の駆動系に関連する機械式LSDの効果をネット上のスタック体験談と関連づけてお伝えします。

オープンデフでの悪路走行にひそむ危険たち

雪道や不整地はスタックが起きやすい状況です。

クルマに備わるデファレンシャルギアは、本来車をスムーズに曲げるための機構ですが、タイヤが路面に接地できない状況に陥ると、浮いたタイヤにばかりを回転させ、肝心の接地しているタイヤには駆動力が伝わらなくなる特性があります。

この特性があるせいで、ぬかるみや吹き溜まりにはまってしまったり、脱輪などを起こすと自分の力だけで脱出するのは非常に困難になります。

悪路を走破するための特別な装備がなければ、クルマは悪路に対して非常に弱い乗り物であり、スタックした場所によってはロードサービスでも救助困難な場合があります。

携帯電話の電波が届かないような奥深い林道や雪山、舗装道路から大きく外れた岩場や沼地でスタックしてしまうと命に関わる事態にもなりかねません。

スタックしやすい危険なシーン&ネット上のスタック体験談

スタックしやすい危険なシーン&ネット上のスタック体験談

レジャーや仕事で雪道や砂浜、林道などを走行する機会が多い方は、常にスタックの危険と隣り合わせです。

スタックしてしまった体験談を、ブログやツイッター、JAFの救助レポートなどの事例から抜粋してご紹介します。

雪道でのスタック体験

人気の観光スポットであっても冬季間は除雪されない場合があります。スタック場所は道幅が狭く、アップダウンや急カーブが点在する峠道のような場所でした。

道積雪量はそれほどではありませんでしたが、駆動輪が吹き溜まりに埋まりそのままスタック。

こうなってしまうとスタッドレスタイヤを履き、エンジンの重量でタイヤが押し付けられる前輪駆動車であっても脱出は困難です。JAFに連絡し、ウィンチを使ってようやく救助されました。

林道でのスタック体験

路面状況が把握しづらい未舗装の林道はスタックしやすい場所です。

乾いた土や砂利の道が続いていても、湧き水や雨水が流れて部分的に沼地のようになっている場所もあります。

落ち葉などで隠れていると見分けがつかないため、そこへ踏み込んでしまうと、簡単にスタックしてしまうことは想像に難くありません。

沼地に近い状態の路面を救助車のウィンチと人力でクルマを押して数百mを移動し、ようやく安全な場所まで脱出できました。

河原でのスタック体験

砂地に大小の丸い石が転がる河川敷のキャンプ場でのスタックです。車はキャンピングカー。

車通りの多い場所から少し外れた場所に停めようとしたとことで、緩んだ砂にタイヤをとられてスタック。

キャンピングカーは、乗用車よりもはるかに車重があるため、脱出を試みるほどタイヤが砂に埋まっていきます。

JAFに連絡するも、JAFでは車両重量3,001kg以上の車は扱えないとのことで、民間のロードサービス会社に救助を依頼。

ウィンチと角材を足場代わりに使って救助されました。

農道でのスタック体験

未舗装の農道でのスタックです。突然の集中豪雨で道路がぬかるみ、小型ワゴン車がスリップして路肩に脱輪。

レッカー車が侵入できないほどの狭い道であったため、脱輪した前輪の前に角材を置き、ウインチワイヤーを延長してようやく救助されました。

砂浜でのスタック体験

砂浜で方向転換する際に、砂のくぼみに後輪をタイヤを落としてしまったスタックです。

車は四輪駆動のハイエースで、オフロードタイヤを装着していたにもかかわらず自力では脱出できませんでした。

スタック当初は引き潮でしたが、ウィンチを使っての救助中に潮が満ちてきて、クルマから数m先まで波が押し寄せた非常に危険なスタック事例です。

不整地走行とスポーツ走行は同じこと

不整地走行とスポーツ走行は同じこと

オープンデフでサーキット走行をすると、速い速度で曲がろうとするほど外側のサスペンションが沈み込み、内側のタイヤが浮き上がってしまい、オープンデフでは内輪ばかりが空転してしまいタイムアップは望めません。

同じように、オープンデフのクルマで滑りやすい路面や不整地を走行すると、駆動輪が浮いたり滑ったりして必要なタイヤに駆動力が伝わらない状況に陥ります。

もしもその場で停まってしまうと身動きがとれなくなってしまう危険が高まります。これがオープンデフの悪癖ともいえる特性です。

これらの不具合を解決できる装備のひとつに挙げられるのがLSDです。

LSDの効果はサーキット走行・ドリフト走行・ドラッグレースなどのモータースポーツでなければ効果を体験できない装備と思われがちですが、悪路走破性を向上させる効果もあります。

LSDを装着していれば、先に紹介したようなスタック体験でも自力で脱出できる可能性が高まります。

LSDとは? キーワードはトラクションアップ

すべてのクルマの駆動輪に備わっているオープンデフとも呼ばれる通常のデファレンシャルギアは、クルマが曲がる際に発生する左右輪の軌道距離差を吸収し、スムーズな走行に欠かせない装置です。

差動装置とも呼ばれます。しかし、前述したようにオープンデフではタイヤが浮いてしまう状況に陥るとクルマは推進力を失ってしまいます。

このクルマが発揮できる推進力のことを「トラクション」と言います。

LSDとはLimited Slip Differential(リミテッド・スリップ・デファレンシャル)の略称であり、オープンデフの差動を規制することでトラクション性能を向上させるための装置です。

さまざまな種類のLSDがあるなか、もっともスタック対策に有効なのは機械式LSDと呼ばれる、クラッチ板を介して左右輪を同期回転させるLSDです。

機械式LSDは過酷な悪路を走行するラリーやクロスカントリーの競技車両などにも装着されています。

LSDは4WDのトラクション性能をさらに引き上げる

LSDは4WDのトラクション性能をさらに引き上げる

不整地走行に適したクルマに四輪駆動車(4WD)が挙げられます。しかし路面状態によっては四輪駆動車でもスタックはします。

四輪駆動車はスタックしないクルマではなく、あくまでスタックしにくいクルマです。

四輪を駆動して高いトラクション性能を発揮する4WDであっても、一箇所でもオープンデフが組み込まれていると、タイヤが完全に浮いてしまう状況下では他のタイヤに駆動力が伝わりづらくなってしまう場合があります。

四輪駆動車に備わるオープンデフを機械式LSDに変更すると、タイヤの空転を抑えるとともに、4つのタイヤへと分割される駆動力をより効率よく地面に伝えられるようになるため、四輪駆動車の高いトラクション性能がさらに向上します。

LSDとデフロックの違い

一部のクルマにはスイッチによってデファレンシャルギアのフリーとロックを切り替えられるの「デフロック」という機能が搭載されています。

これは左右輪およびセンター部に備わるデフを一時的に直結状態にしてLSDと同じようにオープンデフの差動機能を規制する装備です。

LSDが左右輪のグリップとアクセル開度に応じて直結状態になるのに対し、デフロックは動作している間だけ左右輪が直結状態になっています。

デフロックされた状態では、左右輪の軌道距離差を吸収できないため小回りが利かなくなってしまうものの、片輪さえ接地していれば車を前に進められるため、非常に高い悪路走破性能を発揮します。

ただし、デフロックが装着される車は、軽トラやオフロード走行を前提につくられた車などのごく一部です。

アフターパーツとして空気圧で作動させる後付けデフロック装置も存在しますが、非常に高価であるうえ、コンプレッサーを搭載しなくてはならないため荷室を圧迫するデメリットがあります。

その点、機械式LSDは適合する車種であればデファレンシャルギアを交換するだけで装着できます。

効果は体験できる? 機械式LSDのメリット・デメリット

効果は体験できる? 機械式LSDのメリット・デメリット

駆動輪用のLSDにはビスカス式やトルセン式など多くの種類がありますが、これらのLSDは完全なデフロック状態にはなりません。

悪路走破性を高めるためにLSDを装着するなら、しっかりとロックする機械式LSDへの交換をおすすめします。

機械式LSDは多板クラッチ式LSDとも呼ばれ、左右輪の回転差を検知すると内部のカムがクラッチ板を押し広げ、デフロックと同じ直結状態になります。

左右輪の回転差が少ない場合は動作しないため、平時はオープンデフと同様にスムーズに曲がれ、必要な状況ではしっかりとロック状態になり、高いトラクション性能と旋回性を両立できる優れた特性がメリットです。

機械式LSDへの交換は、車を買い換えることなく悪路走破性を高められるもっとも簡単な方法と言えるでしょう。

ただし高いランニングコストがデメリット

メリットばかりに思える機械式LSDですがデメリットもあります。

機械式LSDは使っていると次第に内部部品が摩耗し、徐々に異音発生や性能低下を起こします。

そのため、機械式LSDを使い続けるには、一般的なクルマよりも頻繁なデフオイル交換と、定期的な分解整備を行わなくてはならず、オープンデフに比べてランニングコストが非常に高くなります。

デフオイル交換は、走行距離約3,000km走行毎に高価なLSD専用オイルに交換しなくてはなりません。

分解整備は約3万km毎にデフケースを車体から降ろし、内部部品の交換と調整作業をする必要があります。

分解整備をするたびに、デフケースの脱着工賃がかかるうえ、前輪駆動車の場合はトランスミッションとデフが一体化した構造であるため、脱着工賃がさらに高くなりがちです。

仮に四輪駆動車の前後に機械式LSDを装着したとすると、高いトラクション性能が手に入るものの、二輪駆動車の2倍以上のランニングコストがかかってしまいます。

機械式LSDへの交換でかかる概算費用

前輪駆動車
(FF)
後輪駆動車
(FR)
機械式LSD
本体価格
10〜20万円
(車種に
より)
デフ
着脱工賃
6万円〜 2万5,000円〜
LSD分解
整備部品代
2万円前後
(車種に
より)
LSD分解
整備工賃
1万5,000円〜

ハイコスパなOS技研のLSDで高いトラクション性能を体験しよう

ハイコスパなOS技研のLSDで高いトラクション性能を体験しよう

ランニングコストを抑えられる機械式LSDメーカーといえば、旧・岡﨑スピード技術研究所こと株式会社OS技研が挙げられます。

OS技研の機械式LSDの特徴である、滑らかな動作と確実にロックする性能は、クルマの推進力を向上させるとともに、クラッチプレートの発熱や摩耗を抑えます。

その結果、類まれな高耐久・長寿命を実現し、他社の機械式よりも長いサイクルでオイル交換や分解整備をおこなっても性能低下を小さく抑えることができます。

また、滑らかな機械動作によって、街乗りのような低速走行でも唐突なロックや、バキバキと鳴るチャタリング音が発生しづらい特徴があり、機械式LSDであることを意識せずに使うことができます。

街乗りから競技まで使用できる優れたLSDである代わりに、本体価格はやや高めですが、長期的な使用を前提にすれば非常に安価なランニングコストで使用できる高いコストパフォーマンスがOS技研の機械式LSDの美点です。

レジャーだけでなくビジネス用の営業車も走破性強化で使用範囲を拡大

OS技研のLSDの特徴は高い性能だけにとどまらず、老舗メーカーとしての豊富な適合車種にもあります。

サーキット走行を前提としたスポーツカー用の機械式LSDをはじめとして、OS技研では四輪駆動車専用LSDやミニバン専用LSDもラインナップしています。

四輪駆動車用のLSDはトヨタ ランドクルーザーやハイラックス、FJクルーザーなどのSUVの新旧モデルをカバー。

キャンピングカーのベース車として用いられるトヨタ カムロード用もラインナップし、持ち前の高い走破性をさらに強化します。

また、レジャー用途やビジネス用途にも多用されるトヨタ ハイエースと日産 キャラバンに適合するミニバン用LSDは、悪路走破性を高めるだけでなく日常的な走行性能も高めます。

とくに後輪駆動車のワンボックスカーは空車時に駆動輪に荷重がかかりづらいうえ、背高なボディも相まって、走る・曲がる・止まるのあらゆる動作が不安定になりがちです。

ワンボックスカーの駆動輪にLSDを装着すると、滑りやすい路面での加減速でもしっかりと車体の直進性が保たれ、高速道路のカーブや車線変更、強い横風に煽られても車体が安定するのがしっかりと体験できます。

それによってクルマの運転しやすくなって安全性の向上や運転疲労の低減も体験できるでしょう。

レジャー・ビジネス用途を問わず、クルマの使用範囲や行動範囲をさらに広げるられるようにもなります。

まとめ

オープンデフはクルマのスムーズな旋回を促す一方、悪路走破性を引き下げます。

この悪癖を解消できる機械式LSDは、オープンデフとデフロックの長所を走行状態に合わせて自動で切り替えてくれる装置と言えるでしょう。

一度でも重度のスタック体験をすると、よりLSDのありがたさがわかります。

とくに高い積載量を誇るハイエースやキャラバンは、レジャー・ビジネス用途問わず過酷な環境下で使用される機会が多い車種ですが、別段走行性能が優れているわけではありません。

機械式LSDへと交換すれば、悪路走破性の向上させつつ、ワンボックスカー特有の欠点を解消することができます。

さらに、OS技研の機械式LSDなら、他社の製品に比べて最小限のランニングコスト上昇でクルマの使い勝手を高めることができます。

アウトドアレジャーでの悪路走行の保険的な意味合いとして、またはビジネス用途における長距離運転の補助としてもOS技研の機械式LSDへの交換を強くおすすめします。