突然ですが、皆さんは「トランポ」についてどれだけご存知でしょうか? 「トランポ」は「トランスポーター」の略。ジェイソン・ステイサム主演のカーアクション映画の方ではありませんよ。遊びのギアを運ぶ車のことです。今回はトランポの専門メーカーであり、ファンの間から“トランポの聖地”と崇められる静岡県浜松市の「オグショー」で、営業部の服部賜郎さんにトランポについてのアレやコレやをじっくり聞いて来ました。

トランポは趣味を最大に楽しむための車!

GEARHUB編集部(以下・編:):はじめまして! 今日はトランポのことを勉強しにきました。超初心者なのでゼロから優しく教えてください。まずはトランポって、どんな車のことを言うんですか?

服部さん:トランスポーター、略称トランポはバイクや自転車、釣り道具など趣味のギアを載せて、遊びのフィールドまで移動できるように架装した車のことです。ギアを運べるだけでなく、折り畳み式のベッドを付けて車内で快適に休めるようにした仕様が多いのも特徴です。

オグショーが創業した1990年代前半以前、「トランスポーター」というカテゴリーはまだありませんでした。そうした意味では、当社が開拓し、広まっていったカスタマイズの分野と言ってもいいかもしれません。

タフスペック
▲黒を基調としたカラーで統一された「OGUshow ES TOUGH SPEC CONCEPT(オグショー ESタフスペックコンセプト)」。日常から休日まで使える利便性が特長のキットだ(写真提供/オグショー)

編::趣味の道具をバッチリ確実に積めて、しかも快適に泊まれるなんて、まさに夢の車ですね。どんな趣味の人がトランポを使うんですか?

服部さん::当社代表の小栗伸幸は高校時代からモトクロスを始め、全日本ジュニア250ccクラスのチャンピオンになったライダーなので創業当初はモトクロス愛好家が多かったようです。そこからトライアルなど他のカテゴリーのオフロードバイク愛好家にも知られるようになっていきました。

服部さん
▲自身、オフロードバイクが趣味でトランポの世界に入ったという服部賜郎(はっとり・しろう)さん

バイクを趣味にする人の中には、ウインドサーフィンなどのマリンスポーツ、スキー・スノボなどのウインタースポーツも楽しんでいる人が結構いて、次第にあらゆる趣味の人たちに必要とされるようになっていった……という経緯ですね。最近は釣りや原付のためにトランポを購入されるお客様も多いんですよ。

服部さん
トランポはアクティブな遊びをバックアップするパートナーです

編::トランポを作るときに大切なことって何でしょ?

服部さん::まずはギアをしっかりと積載できて、現地まで確実に運搬できること、そして使いやすいことです。たとえばオフロードバイク競技に出る人の場合は、バイク本体だけでなく、工具やスペアパーツを積載するスペース等も必要ですよね。泥で汚れたままのものも積みますから、掃除しやすいようにする工夫、車内を傷付けない工夫も必要です。

その上で快適に休めるスペースまで確保するのが、トランポ作りの醍醐味であり、専門店の知識と経験が問われるところ! フックを取り付ける場所、ベッドの厚さひとつにも、専門店のノウハウが求められます。

床張り
▲木目調の美しい床張りも、実は耐久性や防水性にばっちり配慮された素材

編:車内にベッドを設置した、いわゆるキャンピング仕様の車にも、遊びのギアを積めそうなものがありますよね? トランポとの違いは何ですか?

服部さん::キャンピング仕様の多くは、車の中を部屋のようにしたい、豪華な空間にしたい、という要望から作られているので、目的からして全く異なります。トランポの目的はあくまで目的地までしっかりギアを運び、お客様自身が休息できる空間を作ること。そのために耐久性、防水性などにも配慮した設計、素材となっていることが大きな違いですね。

ベッド
▲製品によって、目的によってベッドマットの最適な厚さや素材は異なる
服部さん
快適さとコンパクトさ、耐久性を兼ね備えたベッドに当社のノウハウが活かされています!

普段乗りから趣味のフィールド、災害時まで幅広いシーンで活躍するトランポ

編::トランポのベースには、どんな車が選ばれているんですか?

服部さん:やはりバイクなどを載せるにはある程度の広さが必要なので、ハイエースやキャラバンといったワンボックス車を選ぶ方が圧倒的に多いですね。もう少しコンパクトなところで、タウンエースやNV200バネットのお客様もいらっしゃいます。最近では軽バン・ベースのトランポも人気ですね。

キャラバン
▲バイクでもロングボードでも、なんでも積める車内のキャパシティと、洗練された作りで人気の日産キャラバン(写真提供/オグショー)

いずれの車種にしても、普段は買い物などの用事に使いながら、週末はトランポとしてフィールドに出かけてゆく……という使い方が一般的です。プロに近い領域で本格的に活動している方の中には、パネルトラックやバスをトランポにする場合もありますが、少数派と言えるでしょう。

また同じ車でも積むモノや積み方は千差万別で、たとえばハイエースに2台、3台のバイクを積載する人もいれば、1台だけ積んで、あとは就寝スペースという使い方まで、100人のお客様がいたら100通りのトランポがある……という実感です。当社としては車種、積むモノを選ばず、ご要望があればどのようなトランポ製作でも承ります。

服部さん
キャラバン、ハイエースは圧倒的人気ですが、ミニバンなどもトランポのべース車になりますよ

編:なるほど〜。トランポは趣味人、プライベーターの強い味方ってことですね。ところでトランポは趣味のときだけでなく、災害のときにも役立つと聞きました。

服部さん:その通り! 地震などの災害で家が使えなくなってしまったときには、車中泊できる避難所としてトランポが活躍します。小さな車で車中泊するとエコノミークラス症候群などの心配がありますが、ベッドが備わっているトランポなら、そうしたリスクを最小限にできます。

実際、熊本地震などで被災されたお客様からは「トランポがあって助かった。周囲は大変な状況下だったが、安心して過ごすことができた」といった声をいただいています。

編:確かに、車中泊することを前提に作られたトランポなら、いざというときにも役立ってくれそうです。

LSDとの組み合わせでトランポの機動力がさらにアップする

編:さて、ちょっと宣伝っぽくなってしまいますが、トランポとLSDはすごく相性が良い、という話も聞きました。そのあたりはどうなんでしょう?

服部さん:そうなんですよ! もともとキャブオーバー型のワンボックス車はエンジンが前にあるのに後輪を駆動するため、重量配分が前寄りになり、悪路でスタックしやすくなる傾向にあります。また車の作りが貨物車なので、乗用車に比べると直進安定性なども悪い。トランポを使う人はオフロードに足を踏み入れる機会、長距離走行する機会が多いので、ワンボック車のそうした面がどうしても目立ってしまいます。

ところがLSDを装着することによって、ワンボック車特有のウィークポイントがかなり改善されるんです。当社でも以前は複数メーカーのLSDを取り扱っていましたが、OS技研の製品は普段、その存在を意識させないほどスムーズなのに、必要となる場面ではしっかり効いてくれるところ、故障しらずでタフなところが嬉しい点ですね。「2WD車でも安心してオフロードに行けるようになった」「長距離移動が苦ではなくなった」など、当社でOS技研の製品を装着されたお客様からも大変好評をいただいています。

編:オグショーのお客様には「OS Dual Core NEO」が特に人気とのこと、ありがとうございます。

使用イメージ
▲長距離移動で疲れにくく、悪路走行も安心になるLSDは、トランポとの相性もバッチリ(写真提供/オグショー)

フルオーダーから通販まで幅広いラインナップ

編:最後になってしまいましたが、オグショーさんのトランポってどこで買えるんでしたっけ?

服部さん:いくつかの方法があります。ひとつはベース車をご自身で用意いただき、当社製品を装着するケース。この場合は当社もしくは当社ライセンス店にご来店いただいてプロが施工する方法と、通販で購入いただく方法の二通りあります。

当社では通販で購入できる製品を「ESシリーズ」として専用に展開しているので、取り寄せた製品をご自身で装着する、あるいは馴染みのカーショップ等で取り付けてもらえばOKです。

ESシリーズ
▲ESシリーズは通販専用として、DIYでも取り付けられる構造(写真提供/オグショー)

来店いただける場合は、ご自身の使用状況にあわせて架装できるのが魅力です。ベッドや床張りなど基本となる装備を使い、カスタムフィットして仕上げる「SH」シリーズと、完全オーダーメイドとなる「OG」シリーズの2種類をご用意しています。

OGスタイル
▲こちらはフルオーダー仕様である「OGスタイル」の一例。2段ベッドでありながらバイクも積めるスペシャルな仕様だ(写真提供/オグショー)

もうひとつ、車買い換えのタイミングにあわせて当社もしくは当社ライセンス店で新車を購入いただき、トランポに架装する方法、あるいは既に架装してある中古車を購入いただく方法もあります。車選びからメンテ、アフターサービスも含めて総合的なサービスをお届けできるのが、この方法のメリットです。

さらに! キャラバンについては当社製品が装着された新車コンプリート車両「キャラバン トランスポーター」を全国の日産ディーラーで購入できます。ベッド生地にシート生地と同じ素材を採用していて、統一感ある仕上がりとなっています。近くのディーラーさんで購入できますので、とっても手軽ですよ。

編:安全性や品質への基準が厳しい正規ディーラーでも取り扱われているなんて、すごい実績ですね。御社がここまで成長されてきた歴史、ユーザーマインドに沿った製品づくりの秘密については、Part2記事で改めて聞かせてください。ありがとうございました!